【第1回】二重床に2通りあり〜[置き床][固定床]の違いとは


マンションのパンフレットに「二重床」という言葉を見かけたことはありませんか?これは「乾式二重床」のことを意味しています。乾式二重床とは、防振ゴムのついた支持脚で床パネルを支える床仕上げ構造であり、多くのマンションで採用されています。
乾式二重床は、以前は[置き床]とも呼ばれていました。文字通り、コンクリートスラブの上に置くだけの床だったのです。置くだけで大丈夫?との不安もありますが、部屋の周囲を角材を組み合わせた際根太で固定していたため、問題はありませんでした。しかし、この在来際根太が上の階から下の階へ音を伝える原因と判ってから、際根太は使わなくなり防振システムネダを使うことが多くなってきました。すると、二重床はどこにも固定されていないため動きやすくなりました。そこで、この問題を解決するために生まれたのが[固定床]です。このように、現在の乾式二重床には[置き床]と[固定床]があるのです。


では、[置き床]と[固定床]の違いはどこにあるのか。それは耐震性にあります。 地震時の動きを比較してみましょう。[置き床]は、スラブに固定されていないため、スラブから浮いたり、バウンドしたり、ずれたりする場合もあります。一方、[固定床]は、支持脚がスラブへ固定され一体となっているため、突き上げ、横揺れに対しても強く、振動実験では、兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)時の地震波を使用し、震度5の条件で加振しても異常なし(H-400の試験体)という結果がでています。また、[固定床]は床鳴りの原因となるパネルの反り、支持脚の浮きを防ぐことができるなど、数多くのメリットがあります。 万協フロアーは[固定床]です。特許技術である独自のスラブ固定工法「スラブロックシステム」の開発以降、耐震性、遮音性、剛性、そして施工性にすぐれた[固定床]として、多くの支持をいただいております。


スラブロックシステムについてはこちら


振動試験(於:総合建設会社 試験所)


●入力加速度    ……300gal
●加振時間    ……40秒
●結果    ……異常なし
※試験体のはがれ、移動、支持脚曲がり、フロアー、パネルのはがれ等、各部材の破損や異常は発生しなかった。



【第2回】床の遮音性能〜現場実測値により近い表示方法とは


床材(乾式二重床、直貼りフローリング)の遮音性能の表示方法に「推定L等級」というものがあります。カタログなどで「LL-45/LH-50」などと表示されているものです。 しかし公的試験機関では、この「推定L等級」による性能表示を試験成績書に添付することを廃止しています。それは、表示されている性能と実際の建物での実測値が異なり、誤解が生じているためです。(ちなみに実際の建物で測定された床衝撃音遮断性能は、Li,r,L-45/Li,Fmax,r,H(1)-50などと表示されます。)
「推定L等級」は、特定の条件下で測定された床材の性能を示すものであって、実際の建物で発生する音の大きさを示すものではありません。 例えば、集合住宅のリフォームなどで、LL-45の床材を施工したにもかかわらず、その性能値よりも衝撃音が大きい・・・といったトラブルもあるようです。
しかしながら、「推定L等級」は一般的にも浸透した性能表示方法であり、空間性能と同様の表示であることから判りやすく、現在でも商品選定にこれを目安にする例がまだあります。 実際の建物の床衝撃音遮断性能は床スラブの厚さや床材の性能、居室の大きさや形、天井の仕様など様々な要因によって変化します。そのため、床材の性能と空間性能には差が生じる可能性があります。


万協フロアーでは、このような状況の中、実現場における遮音性能(=床衝撃音遮断性能)の確保にこだわり、性能表示の方法についても独自の研究開発を行っています。
躯体そのものの遮音性能を予測する「インピーダンス法」を大学やゼネコン、スラブメーカーと共同研究をすすめる床衝撃音研究会にて開発。 この予測手法による推定値とともに、万協フロアーの施工現場における豊富な実測データ、また試験室、試験棟でのデータ、さらに公的試験機関でのデータをもとに、実際の現場における遮音性能を総合的にシミュレーション。この現場実測値により近い、性能値を参考に、部材や仕様を提案しています。また、得られた知見を積極的に学会等で発表し、より良い建物の建設に役立てていただきたいと考えています。


【第3回】床の硬さが、その空間のパフォーマンスを決める!?


床の硬さ試験、弾力性試験

今年の夏は、テレビでオリンピック観戦という方が多かったのではないでしょうか。メダリストや世界記録を更新した選手を見ていると、人の運動能力の凄さに驚かされるばかりです。こうして選手たちが、未知の記録に挑むことができるのは、競技場の安全や適切な環境が確保されているからこそ。
たとえば、体操の床運動。跳んで、回転して、着地。平坦に見える床で、あれだけの跳躍が可能なのは、弾力のある特殊な床だからです。またそれは、着地時の足腰への負担を軽減し安全を確保しています。一般的な体育館の床では、同様の演技は困難でしょう。それは、床の硬さや弾力が異なるからです。
さて、今回の床良しセミナーのテーマは、[床の硬さ]について。体育館の床のほとんどが二重床になっているのをご存じでしたか。万協フロアーも、体育館やスポーツ施設向けの製品をお届けしていますが、マンション用やオフィス用と何が違うのでしょうか・・・。それは、床の硬さと弾力です。二重床では、支持脚のゴムの硬さや制振材の有無、仕上げ材の種類などによって、用途に応じた適切な[床の硬さ]を設計することができるのです。


マンションの床においては、遮音性の確保が重要ですが、快適な歩行感と転倒時にも安全な硬さを考慮することも大切です。コンクリートスラブの上にやわらかい仕上げ材を貼っても、転倒時の衝撃力はスラブの上とほとんど変わりません。オフィスや店舗の床も固ければよいというものではなく、適度なしなやかさを確保することで、安全で疲れにくい床になります。
万協フロアーでは、人の健康・安全を第一に考え、[床の硬さ]についてあらゆる角度から研究開発を行ってきました。


しなやかな木質素材の床パネルと独自の支持脚によって、用途に応じた最適な[床の硬さ]を設計し、安全で快適な空間づくりに貢献したいと考えています。

【第4回】集合住宅の音問題 音の伝わり方〜特性と対策

音の伝搬に2種類有り~【空気音】と【固体音】


集合住宅に実際に住んでみると隣戸(隣や上の住戸)や建物の外から「音」が聞こえてきます。その伝わり方は様々です。音の伝搬には、空気中を伝搬する【空気音】と建物であればコンクリートや内装材などといった固体中を伝搬する【固体音】があります。

例えば、建物の外部から聞こえてくる音(交通騒音、鳥の声など)や隣の住戸の話し声、テレビやステレオの音はする【空気音】になります。上の住戸の歩く音や物を落とした音は、内装材などの材料に加わった衝撃が振動となり下の階まで伝搬し放射される音ですので固体音】となります。


伝搬速度が速く、減衰しにくい【固体音】の対策


空気音と固体音は伝搬のしくみが異なるので、その特徴や対策も異なります。【固体音】は、空気音に比べ伝わるスピードが速く、減衰しにくいといった特徴があります。この特徴を利用した遊びが糸電話です。空気中を声が伝搬するよりも、離れた場所で声が聞こえます。それは糸という固体を振動が伝搬するからです。

ちなみにコンクリートやガラスを伝搬する振動のスピードは空気中を音が伝わる早さの10倍以上で、水中を音が伝わるスピードは空気中を伝わるスピードの4倍程度です。

伝搬速度が速く、減衰しにくいということは、【固体音】は遠くまで大きな音が伝わるということであり、その対策方法も空気音に比べ難しくなります。基本的な対策としては、振動が伝わる箇所を少なくし、その部分を防振することや、振動が伝わりにくい材料を用いることが有効です。
この考えのもと、万協フロアーでは支持脚や防振システムネダを開発し、振動の伝わる経路を少なくし防振ゴムで振動を減衰させる床システムとしています。また、万協エコボードTGなどの面材を組み合わせ振動の伝搬を減衰させる[YPE-TG]タイプを開発し、上階から下階に伝わる固体音を低減させています。


[YPE-TG]タイプについてはこちら

万協フロアーでは、これからもより遮音性能の高い床システムを開発し、快適な居住空間づくりに取り組んでいきたいと考えています。


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