乾式二重床と代表的な床構造
特徴
乾式二重床
戸建て住宅の根太工法を集合住宅用に展開する過程で発展して生まれた床工法。コンクリートの床スラブの上に高さ調整機能のある金属製の足を立ち上げて水平な床構造をつくることで、湿気や冷気から住空間を遠ざけ、各種配管を柔軟に床下に回すことができる機能的な床です。
また、上下階の騒音問題の低減効果をはじめ、転倒時の安全性・足腰の疲れにくさ、床下利用のしやすさ、高い施工性(施工の速さ、水平の出し易さ)、パーツの少なさ・建築ニーズに対する柔軟性(簡単に補強可能なため床剛性を向上できる、制振材、防振ゴム等の追加、変更で遮音性向上できる等)、仕上げ材を選ばない自由度等、多くのメリットによって集合住宅以外にも店舗や高齢者福祉施設、体育館、医療施設、エアロビクス・ダンスフロアなどにも採用されています。
湿式工法(発泡プラスチック系床下地工法)
集合住宅の床下地工法の一つです。コンクリートスラブ上に団子状の硬化する前のモルタルを等間隔に配置、その上に置いた厚みのある発泡ポリスチレン等のパネルで、モルタル団子を押し潰し床の高さの調整を行う工法。発泡ポリスチレンに取り付けられている小根太を利用して、フローリングを釘止めします。断熱性能に富みますが、床下に空間がなく、低床に限定され、モルタル団子が乾燥硬化するまで数日間、パネル上に乗ることができません。モルタルに水を混ぜるので湿式工法と言われます。
直貼りフロアー
集合住宅の高さを低く抑えるために用いられる工法です。裏面に細かいスリットの入ったクッション材が貼られた仕上げ材を用い、コンクリートスラブ下地に接着剤で施工されます。床下空間が無いため配管等は別途検討が必要です。水平調整機能がないためコンクリートスラブの傾斜がそのまま床面に現れます。そのため施工前にモルタル等でレベリング(水平を出す)が必要になります(湿式工法)。また、クッション材によるフカフカした足裏感覚がありますが、コンクリートの硬さや冷気・湿気が居住者に伝わりやすい構造です。リフォーム時には接着剤施工のクッション材がスラブに残ってしまい、コンクリート表面の修復に労力を要します。
集合住宅・根太工法(在来工法)
乾式二重床が誕生する前、集合住宅で多く用いられた在来工法由来の床構造です。コンクリートスラブ下地に根太を均等に並べ、その上に下地合板を取り付けた床下地です。床下空間が小さいため、床下配管が難しく、直貼りフロアー同様、水平調整機能がないためくさび、パッキンによる調整が施工時に必要です。木材の痩せ、反りによる床きしみ音が発生しやすい工法です。
OAフロアー
オフィス用に床を二重化したフロアのこと。高さ調整のできるパネル支柱と床下地パネルで構成され、仕上材には主に正方形のカーペットタイルを用います。ネットワーク等の床下配線の移動のためにパネルを取り外しやすいように作られた床です。昔の大型コンピュータを置いたときに、床たわみが少ない設計になっているものが多く、大型コンピュータを置かないオフィスにはオーバースペックになります。遮音性はカーペットタイルに依存し、OA配線に特化した低床システムが中心で、床下の高さには限界があります。
鋼製フロアー
鋼製床とは、床下地材として、鉄・アルミ合金等を主材として組み上げられたもので木質下地に比べ、一般に安定性が高いため、体育館などに多く用いられています。構成部材が多く、加工が難しいため柔軟性は高くありません。競技にあった弾力性を有するものが主力です。
戸建て住宅・根太工法(在来工法)
古くから日本の住宅建築を支えてきた床構造です。地面から「床」を上げることで湿気や冷気から居住空間を遠ざけ、床下にできた通風空間により木材の腐食を防ぐなど日本人の知恵が生み出した工法です。畳の上に布団を敷いて寝る日本の生活スタイルはこの工法のおかげです。